二つの人生
仁祖の長男の昭顕世子(ソヒョンセジャ)。彼は清での長い人質生活を終えて、1645年に9年ぶりに故国に戻ってきた。
しかし、仁祖は、外国の文物にかぶれているという理由で昭顕世子を冷遇した。この昭顕世子は帰国後わずか2カ月で亡くなってしまうが、仁祖に毒殺されたのではないかという噂が絶えなかった。
真相は藪(やぶ)の中だが、「息子を毒殺したのでは?」と噂されるところが、仁祖の徳のなさを物語っている。
しかも、仁祖は昭顕世子の葬儀を王の後継者だったと思えないくらいに簡略化させて、その名誉を著しく傷つけた。
そればかりか、昭顕世子の正妻だった姜(カン)氏を死罪に追い込み、息子3人を済州島に流罪にしている。そのうちの2人は暗殺された疑いが強い。
仁祖はおそらく、息子一家を意図的に滅ぼしたのだ。
ひどい話である。
結局、仁祖には二つの人生があった。
クーデターを成功させて即位するまでが「第一の人生」。
即位して自ら朝鮮王朝を統治したのが「第二の人生」。
結論から言えば、「第一の人生」は見事であったが、「第二の人生」は凡庸で惨めであった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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