悠久の日韓古代史・第12話「近江の石塔寺」

小さな石仏が並んでいる



三重の塔

石塔寺は、近江鉄道の桜川駅から徒歩で40分ほどの距離にあった。
入り口には長い石段が見えている。石段の右側に山門があり、その奥が本殿になっているのだが、まず石段を上っていった。
158段の石段を上がると、巨石を積み上げた三重の塔が見えた。そのまわりは、おびただしい数の小さな石仏が囲んでいた。
三重の石塔を構成している巨石は、そこいらに転がっているようなものではなく、特別な地で産出されたものであろう。そんな選りすぐりの巨石を山の上に運ぶのは、今でも難儀するはずで、古代の一時期となれば、国家事業に匹敵するほど大変なことではなかったのか。
何のために、そこの巨石を運ぶ必要があったのか。
仮に、近江の地に渡来人が数多く住み、この広い平野部を耕作に適した農地に変えていったとすれば、その功労者を祀ったものかもしれない。




ただ、この石塔の積み上げ方は、日本ではあまり見られないものであり、むしろ韓国で、これと似たようなものをいくつか見たことがある。
朝鮮半島では、もともと巨石を積み上げて慰霊の場所としたり願いごとをしたりする風潮がある。
実際、今の韓国でも石を積み上げた場所を神聖視している。
それは、古くから朝鮮半島に根付いた土着的な習慣なのだが、この石塔寺の三重の塔も、そんな役割を持っていたのではないかと推定される。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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