光海君(クァンヘグン)の即位/朝鮮王朝歴史全集9

怨みを晴らしたい

仁穆王后の怒りももっともです。今まで周囲から冷たくされて、それが我慢ならなかったのでしょう。
クーデター軍としては、ぜがひでも仁穆王后をかつぎたいので、それまでの無礼を必死に詫びます。そのうえで、機嫌を直してもらって「光海君を撃て」と号令してほしいわけです。その願いが通じて、仁穆王后も承諾します。
クーデターは成功しました。仁穆王后は幽閉されていた場所から王宮に堂々と迎えられますが、“10数年間、誰も見舞いに来なかった”と文句を言っていた人が一転して、「憎き光海君を斬首せよ」と命令します。我が子を殺した怨みを晴らしたいのは当然のことです。
しかし、いくら追放したといっても、先の王を殺すというのは後世で大変な批判を浴びることが目に見えています。




綾陽君も「先王を殺すことはできません」と何度も言うのですが、仁穆王后は納得しません。「光海君を殺せ」の一点張りです。
綾陽君は最後まで抵抗して、光海君を殺さず、島流しにしました。

文=康 熙奉(カン ヒボン)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。

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