逆効果になった反省文
“地上に昇ってきた太陽を見るような思い”という英祖の言葉に、彼の清々しさがあふれている。息子の改心を喜ぶ様子がよく表れている。
だが、英祖が喜びに浸っていたのはほんの一瞬だった。猜疑心が強すぎる性格のせいなのか、英祖は一転して思悼世子の反省文に心がこもっていないと思い始めた。
「よく読むと、空虚な言葉を並べただけではないか」
思悼世子の反省文に対して英祖はそう疑った。
一度そう思ってしまうと、次々に疑念が沸いてきた。思悼世子に関する過去の悪評も英祖の心に再び甦ってきた。
英祖は息子を呼んで弁明させることにした。
その場で思悼世子は、父が期待するような改心の言葉を述べられなかった。それどころか、しまいに思悼世子は泣き崩れる有様だった。その姿を“情けない”と嘆いた英祖は、よけいに息子を詰問したいという衝動にかられた。
「東宮(トングン/世子のこと)におかれましては、入侍(イプシ/王に謁見すること)せよという命を受ければやはり怖くなって震えてしまいます。それで、わかっていることでもすぐに答えられないようです」
重臣たちはこのように思悼世子をかばったのだが、それにもかかわらず、英祖は息子への厳しい視線を変えなかった。
ついに思悼世子は極度に緊張しすぎて前庭で気絶してしまった。急いで医官が呼ばれ、緊急の診察を受けた。それでも状態が良くなかったので、思悼世子は駕籠(かご)に乗せられて帰宅した。
この出来事は、思悼世子に対する英祖の親心を決定的に悪くした。結局、思悼世子が書いた反省文は逆効果を生んでしまったのである。
(第2回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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