英祖(ヨンジョ)と思悼世子(サドセジャ)の悲劇3「自決の強要」

追い出された側近

重臣たちが英祖の前に集まったが、もはや彼らもどうすることもできなかった。それほど英祖の怒りはすさまじかった。
思悼世子の息子のサン(後の正祖〔チョンジョ〕)も、現場にやってきた。
サンは思悼世子の後ろにひざまずいて、祖父に「父を許してください」と必死に懇願したが、すぐに帰されてしまった。
王が刀をふりかざして息子に自決を迫るのは、朝鮮王朝の中でもあってはならない修羅場だった。それだけ英祖は追い込まれていたし、その怒声を間近で聞いた思悼世子も錯乱状態となった。
冷静さを失った思悼世子は、王命に従って自決しようとした。もう他の道は断たれたと覚悟を決めたのだ。
しかし、思悼世子の側近たちが必死になって止めた。




それは王命に逆らうことではあったが、側近たちにしてみれば自らの命を捨ててでも世子を守りたいという気持ちが強かった。
ただ、その行動は英祖の怒りに油を注いだ。英祖は護衛兵に命じて思悼世子の側近をみんな追い出してしまった。
(第4回に続く)

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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