発覚した王妃殺害計画
普通に考えれば、孝懿王后が側室の暗殺をはかるわけがないのだ。なにしろ、彼女は謙虚で温厚な性格で知られていた。朝鮮王朝の数多い王妃の中でもっとも人徳があったと評されるほどでもあった。
しかし、洪国栄は逆恨みをして、孝懿王后が妹を殺害した黒幕だと決めつけるようになった。
<カタキをとる。同じように毒殺してやる>
思い詰めた洪国栄は孝懿王后の食事に毒を盛ろうとした。すでに彼は有能な重臣の面影もなかった。
結局、王妃殺害計画が発覚して窮地に陥った。
正祖は改革の担い手として洪国栄に大きな期待を寄せていたのだが、おぞましい計画が露見するに至って、完全にこの男を見限った。
とはいえ、死罪にするのは忍びなかった。
すっかり人格が変わってしまったが、かつては功績の多い側近であった……そのことを考慮して、正祖は洪国栄を地方に追放するだけにとどめた。それは1780年2月のことだった。つまり、洪国栄が栄華を誇ったのは正祖が即位した後の4年間にすぎなかったのである。
洪国栄は自業自得だった。分をわきまえていれば、正祖の側近として長く栄華を誇ることができたのに……。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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