王権が安定するまで邪魔者を処罰し続けた世祖(セジョ)。彼は在位した14年間は懸命に国事に励んだ。王としての世祖の功績は、朝鮮王朝の基本法典である「経国大典」の編纂を始めたことと、王権を徹底的に強化したことだ。
端宗の母
世祖は権力の中央集権化を進める一方、庶民の生活の安定にも力を注いだ。
確かに、政治的には有能な王であった。
しかし、だからといって、兄弟や甥を殺したことが免罪になるわけではなかった。礼節と名分を重んじる儒教を国教とする朝鮮王朝において、正統的な王とは言えない存在だった。
もちろん、世祖が存命中に彼を非難する声はかき消されてしまったが……。
世祖は晩年、心の安定を求めて仏教に傾倒していった。そうした心境の裏には、彼の周りに起きた不幸な出来事が関係している。特に、長男の懿敬(ウィギョン)の死が痛手だった。
この懿敬は、世祖の即位と同時に17歳で世子に指名された。ところが、その2年後に謎の死をとげてしまった。
一説によると、懿敬は昼寝の途中に悪夢にうなされ、そのまま死んでしまったと言われている。
当時の人たちはそのことを聞いて、幼い端宗(タンジョン)から王位を強奪して殺してしまったことに対する因果応報だと噂した。
しかも、世祖自身も重い皮膚病に苦しむようになった。
それは夢の中で顕徳(ヒョントク)王后(端宗の母)からツバをはかれたことが原因、という話も広く流布(るふ)した。
「まさか、本当に呪いなのか」
心を惑わせた世祖。
彼は、仏教に救いを求めたが、果たして安寧は得られたのだろうか。
世祖は1468年に51歳で世を去った。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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