ドラマ『イ・サン』では、即位式当日に暗殺団が正祖(チョンジョ)の命を狙うシーンが描かれる。それは史実と違うのだが、正祖の暗殺未遂事件は後に実際に起こっている。まさに、王宮の中でドラマのような緊急事態が発生していたのだ。
慶熙宮が正宮だった
正祖は1776年に即位したが、1777年7月28日に事件は起こった。
当時、正祖が住んでいた慶熙宮(キョンヒグン)に、数人の暗殺団が侵入した。しかし、正祖は異変に即座に気付くと、兵士たちを呼び寄せて難を逃れた。
この事件によって、正祖はいくつかの対策を講じた。
まずは、慶熙宮の構造上の問題に気付いたのである。
朝鮮王朝の正宮は建国から景福宮(キョンボックン)だったが、1592年に勃発した豊臣軍の朝鮮出兵の際に焼失してしまった。
以後、昌徳宮(チャンドックン)や昌慶宮(チャンギョングン)といった離宮が正宮となっていた。
慶熙宮もその1つだ。
慶熙宮が建てられたのは、建国の祖・太祖(テジョ)の私邸があった場所で、朝鮮王朝の聖地と崇められていた。
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