最高の弔意
孟思誠は怒らず、平然としていた。すると、若者は「この近くの孟思誠様のお宅を知っているか」と聞いてきた。
「なんの用事があるのかな」
「お目にかかって挨拶をしたいんだ」
「それなら、もう用事は済んだよ。帰ったほうがいい」
「ということは……」
「そう、私が孟思誠だ。君の尊大な挨拶をもう受けたよ」
仰天した若者は、逃げるように帰って行った。
清貧の高官。朝鮮王朝時代を通して孟思誠ほど身分と暮らしが合っていない人はいなかった。
彼は、民の暮らしを知るためには、自分も同じようにしなければいけないと考えていた。同時に、身なりで人を判断する風潮をあざわらった。
孟思誠が死んだ日、世宗は高官たちに休日を申し渡した。それは、見事な人生を歩んだ孟思誠に対する聖君からの最高の弔意だった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)