信頼で結ばれた世宗と学者
冬の深夜のことだった。寝る前に集賢殿に足を運ぶのが習慣となっていた世宗は、いつものように集賢殿に足を向けた。すでに日付は変わっていた。
「さすがにこの時間ならば、みな寝入っているだろうな」
そう思っていた世宗だが、集賢殿にはうっすらとした灯りがともされていた。そのことに感銘を受けた彼は、衛兵を呼び出して命じた。
「いま集賢殿にいる者は誰であり、何をしているのか内密に見てくれ」
衛兵は足音を殺して集賢殿の中を確認し、世宗に報告した。
「集賢殿では申叔舟(シン・スクチュ)様が熱心に本を読んでおられます」
「では、彼が就寝するころにまた報告に来なさい」
世宗がこのように命令したのは、信頼する集賢殿の学者たちが、日ごろどれくらい熱心に研究を続けているのかを把握するためであった。
しかし、衛兵はいつまで経っても世宗のもとに訪れず、あたりには陽の光が差し込み始めた……。
ようやく衛兵は世宗のもとにやってきた。世宗はその報告に喜ぶと、急ぎ足で集賢殿に向かった。そこでは申叔舟が本を読むのに疲れて机に突っ伏していた。
「私の信頼に応えてくれる者よ。いつも感謝している」
世宗はそうつぶやくと、自分の上着を申叔舟に掛けてあげた。
やがて目を覚ました申叔舟は、「殿下は私たちをいつも見守ってくださる。その期待に応えなければ」と、さらなる意欲を燃やした。
こうした逸話を通しても、集賢殿の学者と世宗が固いきずなで結ばれていたことがわかる。
文=「チャレソ」編集部