王朝の基盤を作った太宗(テジョン)/朝鮮王朝歴史全集2

野望が強い叔父

幼い端宗が頼ったのが金宗瑞(キム・ジョンソ)という老臣です。世宗の時代に北から侵攻してきた異民族を食い止める際に大きな功績を挙げた英雄で、別称が「大虎」。そう言われるくらい勇猛な人だったのです。
こうして、金宗瑞が後見人となって端宗を支えました。それでも端宗の王位は安泰とはいきません。
なぜなら、世宗の二男で端宗の叔父にあたる首陽大君(スヤンデグン)が露骨に王位を狙う動きをしていたからです。
兄弟の中で普通は長男に王位が行きますから、二男だと本来は出番がないのですが、この首陽大君は自信過剰で「俺が王にふさわしい」と思い込み、甥から王座を奪う策略を練ります。




実は、文宗も弟の首陽大君の野望を見抜いていました。「自分が死ねば、弟が王位を狙ってくるだろう」と察知していて、亡くなる間際まで金宗瑞に「絶対に息子を守ってくれ」と頼んでいます。
こうして端宗の王位をめぐって金宗瑞と首陽大君が激しく対立しました。

文=康 熙奉(カン ヒボン)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。

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