気絶したイ・ソン
「よく読むと、空虚な言葉を並べただけではないか」
イ・ソンの反省文に対して英祖はそう疑った。
一度そう思ってしまうと、次々に疑念が沸いてきた。イ・ソンに関する過去の悪評も英祖の心に再び甦ってきた。
英祖は息子を呼んで弁明させることにした。
その場でイ・ソンは、父が期待するような改心の言葉を述べられなかった。それどころか、しまいにイ・ソンは泣き崩れる有様だった。その姿を見て英祖は「なんと情けないことか」と憤った。
さらに、イ・ソンは極度に緊張しすぎて英祖の前で気絶してしまった。急いで医官が呼ばれ、緊急の診察を受けた。
それでも状態が良くなかったので、イ・ソンは駕籠(かご)に乗せられて英祖の前から姿を消した。
この出来事は、英祖のイ・ソンに対する親心を決定的に悪くした。結局、イ・ソンが書いた反省文は逆効果を生んでしまったのである。
後にイ・ソンは英祖によって米びつに閉じ込められて餓死するが、せっかくの反省文が生かされなかったことも、親子のさらなる確執の一因になった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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