常民と賤民
中人の下になるのが常民だ。他にも、常人(サンイン)や良人(ヤンイン)とも呼ばれた。あるいは、百姓(ペクソン)という言い方もあった。この場合の百姓は「民衆」を意味していた。
常民は、主に農業、工業、商業を行なう人々だ。そういう意味では、身分制度の中で圧倒的に人数が多かった。この人たちが「民衆」を形成していたと言える。
さらに、常民の下に位置づけられた身分が賤民だ。
奴婢、妓生(キセン)、芸人、巫女などが該当する。また、朝鮮王朝は仏教を排斥したので、僧侶も賤民に属する場合があった。
賤民はとても苦しい生活を強いられた。特に、奴婢の子として生まれた人は死ぬまで奴婢のままなので、その境遇から抜け出す手段がなかった。
ただし、賤民の女性が妓生となって、裕福な男性に目をかけられて裕福な暮らしを送れる例がわずかにあった。たとえば、あの鄭蘭貞(チョン・ナンジョン)がそうであったように……。
いずれにしても、朝鮮王朝の人々は厳しい身分制度によって、官職、納税、軍役、刑罰の面で著しい差別を受け、服装、住まい、婚姻などでも制限を受けたのである。
文=康 熙奉(カン ヒボン)