死後の動乱を予期
生まれた王子こそが不運な人生を歩むことになる端宗(タンジョン)である。その出産は難産となり、王子を産んだ顕徳王后は直後に亡くなってしまった。
母親がいない端宗を世宗はとても可愛がった。
しかし、世宗の頭を悩ませたのは、大きな野心を持つ二男の首陽(スヤン)大君の存在だった。
晩年、床に伏せるようになった世宗は信頼の置ける側近たちを集めると一つの願いを伝えた。
「長男は優秀だが、長生きはできないだろう。そうなった時、首陽の気性を考えたら王位に欲を出すかもしれない。私は首陽を信じたい。しかし、万が一のことがあったら、お前たちがしっかり孫の面倒を見てくれ」
世宗は自分の死後の動乱を予期した。
彼も心苦しかっただろう。しかし、孫の端宗をしっかり守りたいという気持ちがとても強かった。
そんな世宗は1450年に亡くなった。朝鮮王朝に多くの光を注いだ聖君も、寿命だけはどうしようもなかった。
文=「チャレソ」編集部