知りたい朝鮮王朝11/中宗と趙光祖

理想の忠臣

不安におそれおののく人々。こうした社会の混乱を好機ととらえる勢力があった。
趙光祖に反旗をひるがえした人たちは、どさくさにまぎれて王宮の中の葉っぱに蜂蜜で
「走肖為王」という漢字を書いた。
これは、虫が蜂蜜の部分だけを食べて文字が自然に浮かびあがったように見せる細工でもあった。
なお、「走肖」とは「趙」のことで、「趙光祖が王になる」という意味だった。この葉を自ら仕込んだ者が、中宗に接見して言った。
「殿下、これをご覧ください。これは大問題でございます。趙光祖の思い上がった態度が葉っぱに現れています」
中宗も葉を見て仰天した。
すかさず、命令を出した。
「ただちに趙光祖をとらえ、官職を剥奪した上で島流しにするのだ」




しかし、趙光祖を慕う者たちが大挙して、無罪を主張し始めた。その姿を見た中宗は、かえって不気味に思った。
「ここまで人心を掌握しているとは……。まさか、本当に彼は王位を狙っているのではないのか」
それは恐怖に似た感情だった。
1519年12月、中宗は趙光祖に死薬を与えた。しかし、一方的な勘違いで殺された趙光祖は、中宗を恨むことなく素直に受け入れた。それこそが、彼が追い求めた理想の忠臣の姿だった。

文=「チャレソ」編集部

知りたい朝鮮王朝1/最高実力者になった李成桂

知りたい朝鮮王朝2/芳遠が3代王の太宗となる

知りたい朝鮮王朝3/名君・世宗の誕生

知りたい朝鮮王朝10/中宗が即位

知りたい朝鮮王朝12/仁宗を毒殺した文定王后




固定ページ:
1 2

3

関連記事

特集記事

ページ上部へ戻る