『イ・サン』が描いた正祖(チョンジョ)と洪国栄(ホン・グギョン)の関係は真実?

側室となった妹

今や、出世を願う官僚たちが洪国栄の前で卑屈に列を成した。そんな身分に祭り上げられた末に、洪国栄の欲望に際限がなくなった。彼はさらなる大望をかなえようと策を弄し始めた。
洪国栄が目をつけたのは、正祖の正妻である孝懿(ヒョイ)王后に子供がいないことだった。彼女は病弱だったので、その後も子供を産める可能性が低かった。
洪国栄は自分の妹を正祖の側室として宮中に送り込んだ。それが元嬪(ウォンビン)・洪(ホン)氏である。
「なんとしても殿下の子供を産め」
洪国栄は妹に厳命していたが、なんでも自分の思いどおりになるわけではない。不幸なことに、元嬪・洪氏は側室になって1年ほどで亡くなってしまった。
実の妹があまりに突然に世を去り、洪国栄は自責の念にかられた。
<妹を宮中に送り込んだばかりに……>




哀れな妹を思って、洪国栄は号泣した。
やがて涙が涸〔か〕れてくると、彼の心に疑念が生まれた。
<なぜ、あんなに元気だった妹が突然死んだのか。もしや……>
疑念はどんどんふくらみ、やがて一人の女性に行き当たった。
<中殿(チュンジョン)の指図によって毒殺されたのでは……>
中殿とは王妃のことである。具体的には孝懿王后を指している。
一度そう思うと、その疑念は強迫観念となって洪国栄の心を苦しめた。ここに至っては、洪国栄も完全に冷静さを失っていた。
(ページ3に続く)

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