明宗の悲しみ
朝鮮王朝時代、幼い王を補佐するという名目で女帝のように振る舞った王妃が何人もいるが、その中でも一番悪政を行なって民衆を困らせたのが文定王后だ。
1550年代は飢饉が続いて餓死する人も多く出ていた。それなのに、文定王后は実権を持ちながら庶民を救済する対策を取らず、身内で高官を独占して政治を腐敗させた。そういう意味では、悪女中の悪女だったと言える。
この文定王后の弟が尹元衡だ。まったく能力のない男なのだが、姉が王妃ということで出世を果たし、悪政の実行役となった。
姉が姉なら弟も弟で、こういう人間に統治されたのだから、朝鮮王朝も1550年代は不幸であった。
この尹元衡の妾となっていたのが鄭蘭貞であり、2人は共謀して尹元衡の妻を殺した。そして、まんまと鄭蘭貞が妻になったのだ。
文定王后をトップにして、その下に就いたのが尹元衡と鄭蘭貞。この3人が悪事を働くのを明宗はただ見ているだけしかできなかった。
彼はどんなに心を痛めていたことだろうか。
こうした歴史を知ったうえで『オクニョ』を見ると、さらにドラマが面白くなるかもしれない。
文=康 熙奉(カン ヒボン)