張緑水(チャン・ノクス)は、10代王・燕山君(ヨンサングン)の側室となった女性である。「朝鮮王朝三大悪女」の1人として知られているが、いったい彼女は何をしたのだろうか。
妓生となった張緑水
幼いころに貧しい生活を送っていた張緑水は、そんな生活から抜け出すために歌と踊りを生かして妓生(キセン)となる。それは30歳のときだった。
彼女の歌声はとても評判がよかった。
その噂を聞いた燕山君は張緑水を宮中に招いた。
評判通りの歌を披露した彼女を気に入った燕山君は、臣下の反対を受けながらも彼女を側室に迎え入れた。
妓生でありながら側室となった張緑水は、王家の女性たちや燕山君の側近たちからは良く思われていなかった。
1494年に即位した当時の燕山君は、最初は政治に意欲的だったが、数年が経つと慣例を無視してやりたい放題するようになった。
国王の後ろ盾によってつけあがった張緑水は、燕山君と一緒に贅沢三昧の生活に溺れた。
さらに、倉庫から何度も財宝を持ち出して空にしてしまった。
その報告を受けた燕山君は増税を行なって国民たちを苦しめたり、富裕層の財産を没収したりした。
しかし、そんな燕山君の暴政は長くは続かなかった。
彼は1506年に起こったクーデターにより廃位となり、江華島(カンファド)に流罪となった。
一方の張緑水も王をたぶらかした女性として斬首に処されたうえに、彼女の遺体はしばらく市中にさらされた。
張緑水に多くの恨みを持っていた人々は、その遺体に向かって唾を吐いたり、石を投げたりした。
朝鮮王朝の悪女の中でも、ここまで恨まれた女性はいない。
それでも、貧しい家で育った女性が自らの欲望に溺れた結果と考えると、張緑水も朝鮮王朝の厳しい身分制度が生み出した悪女だと言える。
文=康 大地(コウ ダイチ)