異母兄弟の因縁
中宗は、クーデター軍が自分を迎えに屋敷まで来たとき、「兄が自分を殺すために兵士を送ってきた」と勘違いして、「もはや、これまで」と自害しようとした。それほど、燕山君のことを恐れていたのである。
しかし、事情がはっきりわかると、今度は自分が王に擁立されることを断固拒否した。中宗は「兄に代わって王になることなんて絶対にできない」と言った。もし兄に代わって王になれば、いずれどんな仕返しをされるかわからなかったからだ。
腹の底から燕山君を恐れていたのが、異母弟の中宗であった。
度重なる説得によって、ようやく中宗は王になる決心をしたのだが、それでも彼はずっと生きた心地がしなかった。「いつ兄に復讐されるか」と震えていた。
燕山君は、流罪先の江華島(カンファド)で廃位後数カ月で息絶えた。その知らせを受けて中宗は何を思ったのか。
彼はようやく熟睡できるようになったのではないか。
文=康 熙奉(カン ヒボン)