中宗の統治/康熙奉の朝鮮王朝人物史12

中宗(チュンジョン)は周囲にかつがれて王になったので、クーデターを成功させた人たちに頭があがりません。結果的に、自立性に乏しい王でした。高官たちは中宗に対して「妻の端敬(タンギョン)王妃を離縁してほしい」と迫ります。





赤いチマ岩の伝説

離縁しようとした理由は、端敬王后が燕山君の妻の姪であり、父親も燕山君(ヨンサングン)の側近だったからです。このように、端敬王后の親戚には燕山君と関係が深い人が多かったのです。
中宗は承服できません。
「勘違いして自決しようとしたときに押しとどめてくれた愛妻と、なぜ別れなければいけないのか」
そんな心境だったことでしょう。
しかも、王なのですから、臣下が何を言ってきてもつっぱねればよかったのです。ところが、中宗は気が弱いというかはっきりしない性格で、最後は端敬王后の廃妃に同意してしまいます。
それでも中宗はメソメソするばかりです。王宮の高い場所に立ち、端敬王后が住むあたりを見ては、ため息をついていました。そのことが都で噂になり、端敬王后の耳にも入ります。そこで彼女は、住まいの裏の岩山にかつて自分がよく着ていた赤いチマ(スカート)を干し、“私はここで元気に暮らしています”と伝えてあげました。これは「赤いチマ岩の伝説」とよばれ、韓国でも夫婦愛を示すよい話といわれていますが……。




もとはといえば、中宗が夫としてだらしないから起こった話です。この中宗は『宮廷女官 チャングムの誓い』でもひんぱんに登場します。イム・ホという俳優が演じており、いかにも「できそうな男」に描かれていますが、実際は優柔不断な王でした。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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